本題の前に

新年明けましておめでとうございます。
「貼りもん屋」こと株式会社テクノワークス社長の沼田です。
この「貼りもん屋」ってフレーズ、僕が専務時代に書いていたブログに使っていたタイトルです。
ラミネート加工=フィルムを貼る事、フィルムを貼ったもの=大阪風に言うと貼ったもん・貼りもん、ときてここから貼りもん屋としました。
3年超愛用してきたフレーズですし、思い入れもあります。
それに弊社の直販サイトである「貼りもん屋.com」の屋号にしちゃった位ですから(笑)
専務時代は非公式という扱いで相互リンクをしてませんでしたが、今後は社長の立場としてこちらのスペースをお借りして継続していこうと思います。
という訳で、カテゴリーとしては社長ブログとなりますが、貼りもん屋の二つ名を使わせていただきますね!

アウトガスとは?

では早速本題に入ります。
今回は、表題のとおり「アウトガスの恐ろしさと対策について」書いてみたいと思います。
僕たちの仕事は、粘着のフィルムを樹脂板に貼る事がすべての根幹をなしております。
その過程で、勿論色んな樹脂・プラスチックの板を扱います。
そして当然色んな種類のフィルムを扱います。
フィルムも樹脂・プラスチックで出来ております。
樹脂・プラスチックと一まとめにしておりますが、様々な素材や性質・特性がありますので、その事を頭に入れておかないと後々トラブルの元となるケースが往々にあります。
貼りもんの仕事において最も多いのが「アウトガス」と呼ばれる現象です。
「アウト」これは「外側」って事ではなく、「遅れて」とか「後から」っていうニュアンスです。
「ガス」は文字通り「ガス」、もしくは「気泡」とイメージして下さい。
要は「遅れて」、「後から」発生する「ガス」・「気泡」が生じる現象を「アウトガス」と呼んでおります。
貼りもん仕事の場合、フィルムを貼ってしばらく時間が経過した際にこのアウトガス現象が生じてトラブル・クレームの元となる事があります。
その事をきっちり認識して対処する必要があるという事です。

アウトガス発生の実例と原因

それでは実際にアウトガスの症状が発生した実例と原因を探っていきましょう。
アウトガスの原因で最も多いのは樹脂板の成型時における脱脂・予備乾燥の甘さがあります。
脱脂?予備乾燥?などと専門用語で難しくなるのでざっくり言いますと、水分が影響してるという事。
成型の前工程で水分を飛ばすべく行う乾燥工程がなんらかの理由で不十分となり、板の中に水分が残ってしまうんですね。
残った水分が時間の経過と共に乾燥する際にガスとなります。
これがアウトガスの一因とみられています。
また、予備乾燥が十分でも成型後に空気中の水分を吸収し、乾燥してガスを出してしまい易い素材もあります。
弊社の取り扱い素材の中でガスを出してしまい易い素材をあげてみます。
PC(ポリカーボネイト)樹脂・アクリル樹脂、こちらは予備乾燥と吸水性の両方が原因でガスを出しやすい素材です。
吸水性、つまり水分を吸ってしまう性質です。
HIPS(ハインパクトポリスチレン)樹脂、こちらは吸水性はありませんが、PS(ポリスチレン)素材自体がガスを出しやすい性質があります。
この3点の加工の際は、特にアウトガス対策が必須となります。
また、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPVC(塩化ビニル)といった素材でも板厚が1.0㎜を越えてくるとガスを出す可能性があります。
これは実際に経験してきました。
ちなみにシート・プレートメーカー様ではガスの可能性を否定されましたが、実際に経験したのでそう判断せざるを得ないという事です。

次にフィルムの方を考えてみます。
弊社では平素、ほとんどの工程でPETフィルムを採用しております。
未処理のPETは若干の空気を通します。
なのでごくごく少量のガスであれば通気して問題にならないケースがあります。
ただ、未処理のPETフィルムを貼る事自体がまずありません。
必ず何等かの加飾・機能性を付与したフィルムになってます。
特に多いのがミラーやヘアライン、ホログラムなどのフィルム。
共通しているのはアルミ蒸着処理をしている事です。
この「アルミ蒸着」がPETフィルムの通気性を失くしてしまいます。
ポテトチップスの袋やレトルト食材の袋を想像して下さい。
袋の内側って全部銀色やねずみ色じゃないですか?
それらはすべてミラーフィルムと同じくアルミ蒸着処理がされてます。
アルミ蒸着をするとフィルムの通気性を失くし、密閉性や乾燥状態を保つなどの効果があります。
アルミ蒸着をした板とガスを出す恐れのある板、何の対策も無しにこの組み合わせで加工した実例を写真でご覧ください。

これはアウトガス現象をよりはっきり示す為に行った試験体です。
何の対策もしていないミラーフィルムとHIPS樹脂を貼り合わせ、乾燥炉にて乾燥して強制的にガスを放出させました。
乾燥前は綺麗に貼ってミラーとして使える状態でした。
樹脂板から放出されたガス、蒸着フィルムは通気性がなく行き場を失ったガスが気泡となり残ります。
この写真の場合、強制的に極端にガスを放出されたので気泡どころかフィルム自体部分的に浮き上がってしまいました。
端部へ逃げるように、トンネルのように連なるので「トンネル現象」とも呼びます。
繰返し言いますが、貼り合わせをしくじった訳ではなく、綺麗に貼った後から発生した現象です。

対策は?

この写真を見る限り、かなりショッキングに見えますね。
実際、これに近い症状で大クレームになった経験があります。
しかしご心配にはおよびません、現在ではしっかり対策しております。
経験したからこそ、そしてそれを乗り越える対策を行っているからこそ過去の事例としてお伝えする事が出来る訳です。
さて、それではもったいぶらずに対策についてお伝えします。
結局、一番無難な対策としてはガスを出さない素材・厚みに限定する事なんですが、それでは根本的な解決になっておりません。
そこは餅は餅屋。
弊社の貼り合わせは塗工された粘着剤による感圧ラミネート加工です。
フィルムと板を繋ぐのは粘着剤。
弊社が粘着剤の塗工を委託している業者様の協力の元、このアウトガスに対応した粘着剤を選定して塗工して頂いてます。
現行の粘着剤を塗工して以来、このアウトガスのトラブルは一切起こっておりません。
PC・アクリル・HIPS・PVC、これらの素材で3.0㎜厚までであれば一切問題ございません。
どんどん実績も積んでおります。
もちろん、弊社で手配して上記の粘着剤を塗工したものに限ります。
時折、「ウィンドウフィルムを貼ってほしい」というご要望を頂きます。
ウィンドウフィルムは、様々な種類があり小ロットで入手可能なので魅力的な事は良く分ります。
しかし、ウィンドウ=窓ガラス用途に開発されたフィルムは樹脂のアウトガスに対応していない事がほとんどです。
熱線カットなどのフィルムには同じくアルミ蒸着がされている場合もあります。
また、ハードコートなどのコーティングによって通気性がなくなる場合も考えられます。
昨今ではフィルムメーカーのほうで、ウィンドウフィルムは樹脂には加工出来ない旨の表記、注意喚起もされております。
上記の理由からヒアリングの結果、場合によってはお断りするケースもありますので、よくよくご注意をお願い致します。