はじめに

今回は仕入品のポリカミラーとちょっと珍しいトムソン型による打ち抜き事例をご紹介したいと思います。
お客様からのご要望は70Φの丸型とその中心部に8Φの穴が明いた形状です。
外径(70Φ)と内径(8Φ)この処理をどうしようかというのが一つのポイントです。
それに仕入品のポリカミラーについても説明しなきゃいけませんね。

仕入れ品のポリカミラー

弊社では基本的に弊社の自主規格であるミラーフィルムのラミネート加工品、これを「樹脂ミラー」と称して提供しております。
しかし、製法由来の長所・短所が当然ながら存在します。
特にその短所については、すぐさま改善できるものではありません。
あまり自社商品に拘り過ぎるとこの短所をお客様に押し付けるか、もしくはそれが原因で断念される場合すらありうる訳です。
基本的にはお客様のお困り事を解決するのが私どもの仕事と思っておりますので、本来であれば競合する他社メーカー製の樹脂ミラーも仕入れ品として取り扱っている訳です。
前置きが長くなりましたが、このポリカミラーです。
読んで字のごとくポリカーボネイト素材で作られたミラーです。
透明なポリカーボネイト樹脂素材にアルミを直接真空蒸着処理をし、反射膜を塗料で保護されて出来ております。
樹脂層を透過して見るのでガラス鏡と同じく背面鏡のジャンルになります。
本来、このポリカーボネイトはとても高価な素材です。
もちろんミラーグレードには国内メーカーの素材もございます。
しかし弊社では比較的安価な海外輸入品のポリカミラーを取り扱っております。
品質的には国産には劣るものの十分匹敵する程の映りをしますし、(国内メーカー品と比べて)コストメリットもございます。

経緯について

今回のお客様は実は別件で過去にご依頼を頂いた事があります。
その当時もポリカミラーのご指定でした。
お客様の中には慣例的に過去に一度でも触れた素材、この場合で言いますと樹脂ミラーなんですがどんな用途であってもそれ一本になりがちです。
すこし分りにくい入りとなりましたので例えてみます。
過去に一度でもアクリルミラーを使った事があれば、今回の用途にはPETやポリカが向いていようが樹脂ミラーの呼称として「アクリルミラー・アクリミラー」と呼ばれる事がしばしばございます。
今回のケースも冒頭から「ポリカミラー」でした。
弊社製のフィルムラミネート式のPETやPVCではいけないものかと思い、そのあたりをお伺いしてみました。
すると、同じく過去にポリカミラーの取り扱いがあってその使用感を変えたくないとの旨でした。
一旦弊社製法のものをご紹介してみましたが、やはりポリカという事で弊社で取扱い可能なポリカミラーを提案するに至った訳です。
今回、あらためてお伺いしましたがやはり同じくポリカミラーでのご希望でした。
これは前回の際に柔軟に仕入れ品を提案できた成果でもあります。

余談ですが最近同様にポリカミラーの相談をちょくちょく頂きます。
お伺いしていると従来依頼していた業者様が廃業されたとかで発注する先を探しておられるケースが多いように見受けられます。
内容によっては弊社製法の商品に切り替えて頂ける事もございますし、今回のように類似のポリカミラーで上手く代用できる事もございます。
もし同様なケースでお困りの際には、是非弊社へご相談下さい。

打抜きについて

さて、冒頭でも少しふれた外径70Φと内径8Φの処理、これをどうするかです。
今回のご希望は板厚が0.5㎜の素材でとの事。
単純に外径70Φはトムソン型で簡単に打ち抜けます。
しかし内径の8Φは少し厄介なんです。
ここでトムソンの型屋さんの出番です。
刃物を曲げて形状を作るトムソンの場合、曲る限界があります。
今回の8Φは曲げの範囲内で対応出来ました。
これがもっと小さな径になるとトムソンではなくポンチ型を用いる事もあります。
細かく説明すると外径と内径を一発同時に加工する方法と、順送り機能のある機械では外径で一度・順送り後内径をもう一度打ち抜き加工する方法もございます。
ただ、残念ながら弊社のトムソン加工機は単発機なので後者の順送り式は不可です。
形状的にど真ん中のセンターに内径の8Φがあるので一発抜きでいけるであろうと判断いたしました。
ちなみに厚みが1.0㎜になればこの一発抜きも厳しかったかもしれません。
その場合、外径70Φで打ち抜いた後、ボール盤で内径の穴明けをする事になったかと思います。

仕上がりと気付き

実際にポリカミラーの0.5㎜厚を加工した様子です。

裏面が白い塗料で保護されております。
表面、鏡面の保護を剥離すればこの通り、綺麗な鏡面反射をしております。
外径も内径も木端口ではなんのひっかかりもなく歪もなく、綺麗に打ち抜けております。

ここでふと思う事があり、試しと後学の為に弊社仕様のものもテスト抜きしてみました。
MP-HC(ハードコートミラー)フィルム加工・0.5㎜厚A-PET樹脂基材の仕様です。

こちら、裏面はもともと定尺板の仕様にある青色のポリマスキングがついてます。
鏡面は言うまでもなく綺麗な鏡面反射をしております。
内径の穴の部分に注目です。
写真ではとらえきれませんでしたが、少し肉盛りがでております。
厳密まで細かい美観を求める場合は今回のようにポリカでいったほうがいいのかもしれません。
こういった事例をどんどん重ね、より的確なご提案に努めていきたいと思います。