はじめに

貼りもん屋で加工したラミネート加工素材。
時折、お客様が水回りでご使用になられるケースがあります。
ただ、水回りといっても色々分かれますよね。
水道の蛇口周り、洗面化粧台、お風呂場、プールサイド、プールや水槽などの水中などなど。
細かく書けばキリがありませんが、素材の特性などを理解しておくとだいたいの回答、アドバイスができます。
今日はそのあたりについて考えてみましょう。

フィルムについて

前回の記事で触れましたが、貼りもん屋で扱うフィルム素材で多いのはアルミ蒸着をしたフィルムです。このアルミ蒸着面が実は水分に弱かったりします。
基本的にはフィルムの内側に処理をして露出しないようにはしてます。
しかし、微細な傷や貼りあわせた端部、もしくは樹脂板側からなど微量な水分が侵入して影響する場合があります。
一般的なガラス鏡を想像してみて下さい。
古い鏡などに錆びのようなものが端部などに見受けられる事があります。
これは端部から侵入した水分で鏡面メッキ処理部分が腐食したからです。
これに近い事が起きる恐れがあります。
アルミ蒸着をしたフィルムの場合、水分によってアルミ処理膜が酸化し、飛んでしまう事があります。
硝子鏡の腐食のような錆びた色ではなく、無色透明になってしまうのです。
これを避けるためには、下段で書く予定ですが水分を通さない樹脂板の選択と、端部からの水分侵入を防ぐ工夫が必要になります。
防湿材でコーティングしたり防水テープで端部を覆うなど。
非常に手間暇とコストがかかるので基本的には受け付けておりませんし、正直おすすめはできません。
水中に沈めて使う用途の場合は、この方法が必須であるとは思います。

芯材について

芯材樹脂板の選定も大事な要素です。
なぜなら前回の記事にも書きましたが、樹脂素材自体が水分を吸収し放出するものがあるからです。
いわゆる吸水性という特性がキーになります。

吸水性について

弊社取扱い素材での吸水性について考えてみます。
PC樹脂(ポリカーボネイト樹脂)とアクリル樹脂については、前回の記事にも書きましたが吸水性がありリスクの高い素材となります。
特に水中に沈めて使うなど用途には不向きです。
水槽の素材などにアクリル樹脂が使われる事がありますが、それは水槽用に吸水しないように表面をコーティングした特殊な素材を用いられております。
弊社が平素仕入れている一般グレードとは異なりますのでご注意ください。

PET樹脂とPVC(塩化ビニル)についてもごくわずかですが吸水性があります。
やはり長期的に水中へ沈めるなどの使い方には不向きです。
例外的にPET樹脂で水中に沈めて使った事例がありますが、その結果については下段に書いてみます。

HIPS樹脂(ハインパクトポリスチレン)、こちらは吸水性がほとんどありません。
お風呂場などの成型品の素材としてもよく利用されております。
とくに水に触れる機会が多い用途ではこの素材をお勧めいたします。

過去事例から学んだ結果

上段で触れた例外的な事例。
これは過去事例としてこちらの新着情報&ブログにも書いております。

詳しくはこちらの記事をご一読ください。

2012年の9月15日から11月25日まで、六甲山頂の屋外水槽にて弊社で加工した樹脂ミラーを水中に沈めて使うアート作品の素材として採用頂きました。
勿論この際も吸水性などの危険性はよくご説明したうえ、作家様の自己責任という形でした。
MP-T(ノーマルミラータイプ)1.0㎜厚でA-PET樹脂素材でした。
実際の展示写真↓

3カ月弱の展示でしたが、撤去の際に作家様より水分を吸った影響かゆるく湾曲したとの報告を受けました。
一番危惧していたアルミ蒸着部分の飛びなどは確認できませんでした。
やはり長期間水中に沈める事により、芯材のPET樹脂が水分を吸収し膨潤したと考えられます。

商業ベースではこんな例が。
一切の詳しい用途は許可を得ておりませんので伏せておきます。
使用法としては3×6の大判でミラー加工したものを何枚も水中に沈めるとの事でした。
これまでに書いた事を加味し、HIPS素材でミラー加工したものを納品し、お客様のもとで端部を防水テープで覆うなどをして商品化されております。
商品化してすでに3年近く経過し、何度もリピートのオーダーも頂いておりますが、水中使用におけるトラブル・クレームは一度も発生しておりません。
連結して沈める為の穴を処理している様子。↓

まとめ

水中に沈めるなどは極端な使われ方なので、芯材からきっちり考える必要があります。
場合によってはお客様の自己責任・ノンクレーム条件となる場合もございます。
そのほかの水辺程度でしたら、PETやPVCでも十分耐用可能なケースがあります。
ただ、取り付け方法、たとえば耐水仕様の両面テープなどの工夫が必要な場合もあります。
お風呂場にはお風呂場専用の、そしてお風呂場以外で活用できる曇り止めフィルムなどの取り扱いもございます。
水回り=不可・NGでは決してございませんので、どんどんご相談お待ちしております。