はじめに

弊社では様々な樹脂板にフィルムをラミネート加工して提供しております。
何度もご紹介しておりますが、ミラー製品を得意としております。
ミラーの場合、当然壁面などに固定して使う方法が一般的ですね。
サイズが小さければ、単純に壁面へ接着剤や両面テープでべったり固定しちゃう事もあります。
ただ、大きいものですとフレームに入れたり金物を使う事もありますね。
施工のプロ、専門家にとってはごく当たり前の知識なんですが、樹脂素材をそういった金物等で固定するにはちょっとコツが要ります。
それは掲題の熱膨張ってものです。
要は温度条件によって樹脂素材が膨張するとい事。
これを知らないと後々問題になる事があります。
今回はこの熱膨張について考えてみましょう。

これを知らないとどうなる?

ちょこっと前項でも触れましたが、これを知らないと後々問題になる事があります。
さて、それはどんな事だと思います?
例えば膨張する事を全く考慮にいれず樹脂板の天地をゼロ勘合にて金物で固定したとします。
そして、案の定経時変化で板が膨張してしまったとします。
すると板は天地左右に伸びようとするのに金物で部分的に固定されてるので、中心部が凸面のように反りあがったりしてしまう事が考えられます。
これ、ミラーだと一大事!
だって凸面になるとめちゃくちゃ歪んで見えますから。
そこで施工のプロさんは事前に樹脂板がどれくらい伸び縮みするか計算して金物を使うのです。
穴を少し大きめに空けたり、クッション性のある緩衝材をかませたり。
その辺はプロの技、ノウハウなのでもっと色んな方法があるかもしれませんね。
あ、貼りもん屋はあくまでラミネート加工の専門家なもんで、今回はこの辺で容赦願いますね。

試しに計算してみましょう!

弊社でよく扱う樹脂素材はPET樹脂やアクリル樹脂です。
樹脂板ごとに物性がもちろんあり、加工に必要な物性データはメーカーさんに開示していただけます。
今回の熱膨張に関しては、熱膨張係数というものになります。
で、たまたまなんですがPET樹脂とアクリル樹脂の熱膨張係数が同じで、70μ(ミクロン)だそうです。
ちなみに単位は(×10-6/℃)だそうですが、勉強不足で完全には理解できておりませんので悪しからず(汗)
70μを㎜に換算すると0.07㎜となり、つまりは気温が1℃変化すると0.07㎜膨張するという事です。
あ、もともとの板の長さの前提が抜けておりましたが、これは1Mの板の場合となります。
1Mの長さの板、これが気温1℃上昇すると0.07㎜延びると言う事になります。
ここで僕達の普段あつかう板のサイズに置き換えます。
ざっくり申しますと、910×1,820㎜の大きさの板が主流です。
なので、巾方向は0.07×0.91=0.0637㎜
長手方向で0.07×1.82=0.1274㎜と言う事になります。
仮に冬場の室温22℃の時に制作した貼りもんの板(PETorアクリル)があるとします。
夏場、エアコンのかかっていない部屋で室温が35℃まで上がるとします。
35-22=13℃の気温変化がある事になります。
これ、つまり先に計算した熱膨張係数をあてはめますと・・・。
巾方向0.0637×13=0.8281㎜
長手方向0.1274×13=1.6562㎜となります。
そうです、最大で長手方向で寸法が1.6㎜強も変化する可能性を指しております。

まとめ

もちろん、実際に使用される環境や温度に関しては持続時間もかかわるので一概にこの通りになるとは限りません。
しかし、施工関係者様や設計のプロの方はここまで計算されて設置方法を工夫されております。
そこにあぐらをかいていてはいけないという事です。
業界の常識は見方を変えれば全く知らない事でもありえます。
今回の熱膨張の事、一般のエンドユーザー様はほとんどご存知ないでしょう。
「施工のプロじゃないので」という言い訳が通じない事もあるかもしれません。
もし、貼りもんに限らず樹脂素材をネジや金物で固定する事があれば、今回の事がご参考になればと思います。