はじめに
今回は、弊社の定番ではなくお客様からのリクエスト・別注で行っている「建材用粘着剤付き化粧フィルム」の貼り加工について、ご紹介したいと思います。
「建材用フィルムってなに?」「どうやって貼ってるの?」
そんな疑問をお持ちの方や、製品開発・資材選定に関わる方に向けて、実際の加工事例を交えて解説します。
1. 建材用フィルムってどんなもの?
まずは「粘着剤付き化粧フィルム」について簡単にご説明します。
これは、壁やドア、什器などの表面に貼ることで「木目」「石目」「金属調」など、デザインを施すことができる装飾フィルムのことです。
裏面には粘着剤(のり)があらかじめついているので、はがして貼るだけ。
いわば、建材業界で使う“高機能なシール”です。
主なブランドには、以下のようなものがあります:
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リアテック(サンゲツ)
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ダイノックシート(3M)
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オルティノ(アイカ工業)
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ベルビアン(タキロンシーアイ化成)など
それぞれに特徴がありますが、中には「1,220㎜幅のロール状」で供給されるものがあります。
上記の中で実際に加工を手掛けたのはサンゲツのリアテックで、こちらは1,220㎜巾50M巻が規格となっておりました。
2. フィルムを貼る相手──何に貼るの?
このフィルムをどんな素材に貼るかも重要です。
当社では、主に以下のような樹脂シートを貼り対象としています:
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硬質塩ビシート(PVC)
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PETシート(G-PET/A-PET)
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HIPS(耐衝撃性ポリスチレン)
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アクリル板など
これらはいずれも「ロールではなく、カットされたシート状(=枚葉材)」で用意されたものを使用します。
今回の事例:「セル判 + 610㎜スリット」で無駄なくピッタリ!
ここからが今回の本題です。
今回の事例では、お客様より材料と厚みの指定がありました。
それは0.4㎜厚のPVC(硬質塩ビ)です。
弊社の規格は平素薄いモノでも0.5㎜厚で3×6板(約915×1,830㎜)がメインです。
PVCでは0.5㎜よりも薄いものはありますが、ここからサイズ帯が変わってきます。
大体が真空成型等に使われるので800や670㎜のロール状だったりします。
しかし弊社はロールtoロールのラミネートではなく、ロール状のフィルムを裁断された枚葉状のシートに対する加工”ロールtoシート”に特化しております。
その為、シート状のものを探す必要がありました。
弊社で調達可能な薄物の硬質塩ビシートには、主に以下の2つのサイズがあります:
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L判:800×1,100㎜
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セル判:670×1,460㎜
今回取り上げるのは、**セル判(670×1,460㎜)**です。
このサイズに対して、一般的な1,220㎜巾の化粧フィルムをそのまま貼ると、かなりの余白が出てしまい、材料ロスが大きくなってしまいます。
そこで私たちは、フィルムを610㎜幅にスリット(半裁)し、670㎜のセル判に貼り込むという方法を採用しています。
610㎜巾なら、セル判の短辺670㎜に対してちょうど良く、わずかな下生地の余白だけでフィルムをロス無く活かすことができます。



この「セル判 × 610㎜スリット」という組み合わせには、いくつものメリットがあります:
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歩留まりが良くなる:フィルムの無駄が少なく、材料コストを抑えられる
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加工精度が安定:平らなシートに対して貼るため、シワやズレ、空気の巻き込みが起きにくい
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作業効率が良い:設備的にも搬送や整列がしやすく、短納期にも対応可能
特に一番は歩留り向上によるコストメリットにあります。
例えば規格の3×6板にこだわるとフィルムを1,220㎜巾から960㎜巾あたりにスリットすれば対応は可能です。
但し、端材の260㎜はそのままだとロスという事になります。
建材用の化粧フィルムは高機能であるので非常に割高になります。
最終的に裁断なりして加工が考えられる場合はマスターサイズにこだわらず、考えを柔軟にしてコストメリットを最大に追いかけた事例であるとも言えます。
まとめ
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建材用粘着フィルム(リアテックやダイノックなど)は、1,220㎜巾が標準
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貼り対象には、ロール状よりもシート状(枚葉)の素材が適している
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薄物硬質塩ビのセル判(670×1,460㎜)は、610㎜スリットとの相性が◎
「こんな素材にも貼れる?」「このサイズでも対応できる?」といったご相談も大歓迎です。
ぜひお気軽にお問い合わせください!