ポスターやサイン、ディスプレイなどで使われる印刷物。
その耐久性や見た目を向上させるために、「表面に保護フィルムを貼りたい」というご要望をいただくことがあります。
とくに近年、UVインクジェット印刷の普及により、樹脂板への直印刷が可能になったことで、そうしたご相談も増えてきました。
しかし、当社では「印刷面への直接のラミネート加工」は基本的にお断りしています。
今回はその理由を、実例を交えてわかりやすく解説し、代替となるご提案も紹介させていただきます。
何故印刷面にフィルムを貼ると問題なのか?
UVインクによる印刷は、紙に染み込む従来のインクと異なりメディア表面にインクを乗せて硬化させる方式です。
つまり、印刷後の表面にはインクの“厚み”がそのまま残っており、触ると微妙な凹凸があります。
そのため、粘着フィルムを貼ろうとするとこのインクの段差に空気が入り込みやすくなり、「バブリング(気泡)」という現象が起こりやすくなります。
とくに透明な保護フィルムの場合、気泡が視認されやすく、美観を損ねてしまいます。
以下の写真は、少々特殊な事例ではありますが透明メディアに対しUVインクジェットで裏刷りをしたうえでその印刷面にミラーフィルムを上貼りテストをしたのもになります。

印刷のインクがある部分を縁取るような空気だまりが確認できます。
これが前述した「バブリング(気泡)」という事になります。
裏刷りの事例ではありますが、表刷りで透明フィルムを保護として貼った場合も全く同じ事が言えます。
そしてよりご理解し易いように図解したものを下に貼っておきます。

単なる「保護ラミネート」は弊社の得意分野ではありません。
当社・テクノワークスは、ただ保護フィルムを貼るだけのいわば「印刷工程延長線上の加工」は専門としておらず、それはあえてポリシーとして避けています。
というのも、こうした加工はオリジナリティが出しにくく価格競争に陥りやすいためです。
仮に参入しても、すでに対応している業者様と比べられ「どこより安く」という土俵に乗らざるを得ません。
後発として価値を出すのが難しい領域と考えています。
ただ、弊社規格の商品の中にはUV印刷以外のものもあります。
例えばカードミラーにおける裏面のフリースペースは、受像層のあるタック紙にオンデマンドプリントやオフセット印刷でフルカラー印刷を刷る場合があります。
その場合は、外部印刷紙器専門業者に依頼し予算次第では印刷面にPP保護貼りをする事もあります。
ではどうするか? 裏貼りという選択肢
そこで当社がご提案しているのが「印刷面への直接貼り」ではなく、「印刷をした後にフィルムを裏側から貼る」という方法です。
ただ、これはもう印刷面の保護が主たる目的ではありません。
前述のミラーフィルムやホログラムフィルムといった、弊社得意分野・専門分野の加飾分野における提案になります。
以下の記事で紹介した「ミラー印刷+裏貼り」手法がまさにその一例です:
この方法では、印刷された面は露出したままですが、裏面に粘着フィルムを貼ることで、板材としての強度や見栄えを補強できます。
主にミラー前提の記事ですが、弊社取扱い素材のフィルムはミラーに限らず裏貼りしてもフィルム加飾効果の良好な素材が多くあります。
アクリルやPET樹脂等の透明メディアにUVインクジェット印刷→裏貼りの順で仕上げることで、気泡や反射によるノズル詰まりのリスクを最小限に抑えながら、見た目も美しく仕上げる事が可能となります。
前述のバブリングした事例に対し、この裏貼りで改善した事例の写真になります。

全体像を写せない事情でかなりのアップ写真になっており、若干画質が粗くなっております。
ただ、当然ですがバブリングは一切ありません。
最後に:加工にお困りの際はご相談ください
当社では「印刷面に貼りたい」というニーズに対して、ただ断るのではなく、なぜNGなのかを明確に説明し、代案をご提案することを大切にしています。
実際に多くのご相談や検証の中で、「裏貼りでの仕上げが最も安定して美しく仕上がる」という結論に至りました。
同様のお悩みをお持ちの方にとって、本記事が参考になれば幸いです。
是非、お気軽にお問い合わせください。