はじめに

弊社ではミラーフィルムを基材樹脂板に貼り合わせてミラーを作っております。
自然、フィルム側が鏡として使用する面になります。
時折ですが弊社のミラーを検討されているお客様より、「心なしか大きく写って見える」とのご指摘を受けます。
さて、それはなぜでしょうか?
それには鏡面反射の仕組みが関係してます。
お客様に説明する意味合いも含めて、少し解説してみたいと思います。

一般的な鏡との対比

鏡面反射、つまり映り込みの仕方についてですが、シンプルな対比として一般的なガラス鏡の仕組みで対比してみましょう。
特殊なものを除き、通常の鏡として使われるものには大きく分けて2つの製法があります。
まず、昔ながらの「銀引き」と呼ばれる製法。
そして「真空蒸着」と呼ばれる製法。
概ね一般的なガラス鏡はこのどちらかで作られてます。
共通しているのは反射膜がガラスの裏側にある事です。
裏側と言っても良く分りませんね?
あまり日常で生のガラス鏡に触れる機会もない事でしょう。

背面鏡

銀引きや真空蒸着で鏡面を製膜されたものには、その面を保護する為に塗料が塗られます。
そう、一旦鏡面となった被膜面を塗料で覆ってしまうんです。
自然、鏡として使う面は反対のガラス面からとなります。
つまり、ガラス面を一度透過する形ですね。
鏡として反射する面、これがガラスの裏側になる訳です。
この方式で使う鏡は「背面鏡」と呼びます。
弊社でも一部取扱いがありますが、メーカー製のアクリルミラーも背面鏡となります。
見分け方は簡単、どちらかの面に塗料が塗ってあるモノです。

表面鏡

では背面鏡の他にはどんな鏡があるかと言いますと、ずばり正反対の「表面鏡」ってのがあります。
文字どおり反射膜が表面にくるものですね。
代表的なものは金属を磨いて作る、ステンレスやアルミミラーがそうです。
弊社のフィルム式もどちらかと言うと表面鏡と言っていいでしょう。
厳密にはフィルムの内側にアルミを真空蒸着してますが。
フィルム自体がすごく薄いので「ほぼ」表面で鏡面反射する訳ですので。

絵で見る背面鏡と表面鏡の映り方の違い

ここでやっと映り方のついての本題となります。
背面鏡、多くは透明のガラスやアクリル板を透過します。
この透過が曲者。
なぜなら、光は屈折するからです。
ガラスやアクリルを光が透過する際、板の厚みの分だけ屈折します。
屈折したまま反射したものを鏡像として捉える訳です。
イラストが全く書けないので少々みすばらしくはありますが手書きの絵で説明したものを載せます。

おわかりいただけますでしょうか?(汗)

光がガラスやアクリル等を透過する際に屈折すると言いました。
この光の屈折により鏡像は少し小さく見えるんです。

次に表面鏡の場合です。

表面鏡の場合、何も透過せずにダイレクトに反射します。
ですので屈折して小さく見えるなんて事はありません。

大きく写ってるんじゃなく正しく写っているという事。

まとめ

さて、そろそろお気づきになられたでしょうか?
冒頭、お客様に指摘された「心なしか大きく写って見える」とのご指摘。

これ、実は表面鏡の方が正しい映り込みをしている事をお伝えしたかったんです。

広く一般的に「鏡」「ミラー」と言えばガラス鏡が絶対的な定番です。
背面鏡で作られたガラス鏡は実は屈折により小さく見えているという事実。
そしてフィルム方式のミラーや金属を磨いたいわゆる表面鏡は、正しい反射をしているに過ぎないって事。
とはいえ結局は全ての基準は背面鏡のガラス鏡って事になるんですけどね。

追加情報として。
一般的な理美容用途の姿見のごくごく一部には、わざと小さく(細く)写るミラーも存在します。
板ガラスに軽くRをつけるんですね。
より綺麗に、美しく、痩せて見えたい。
そんな願望を鏡越しに実現してるんでしょうか(苦笑)
だから時折弊社の樹脂ミラーを見て「太って見える」なんてお叱りうけるのかも…。